「気」病の弁証
こんばんは🌙
今日はまた中医学のお話です。
基礎から振り返ると、いろいろ思い出して勉強になります。
弁証論治
べんしょうろんちって読みます。
中医学の醍醐味。面白いところ。
この弁証論治の概念を頭に入れておくと、「患者さんの症状を診て漢方薬を決めるまで」の流れが分かるようになります。
ここでいう「弁証」とは、患者さんの訴える主観的訴えと、中医師が診る客観的症状(脈を診る切診、舌を診る舌診、顔色・皮膚の状態・目や髪の毛などを診る望診、体臭・声・呼吸などを診る聞診、寒熱・睡眠・排泄物・月経などについての問診)を分析・統合し、ある性質の症状を「漢字4つ+証」で表すことを指しています。
例えば、同じ咳でもいろいろ原因があるわけで、
寒さによる咳・・・風寒襲肺証
熱による咳・・・風熱犯肺証
乾燥による咳・・・風燥傷肺証
だったりします。
西洋医学だったら
咳→咳止め となりますが
中医学ではその間に一つ増えて、
咳→寒or熱or乾燥→それぞれに合う漢方薬 となる構図です。
その漢方薬を決めることを「論治」と言います。
で、その肝心な「寒か熱か乾燥か?」を決めるときに診るのが、舌だったり脈だったり、冷え性かまたは、ほてりタイプなのか等の体質だったりするわけです。
でも、これって皆さん日頃から考えてないですか?
「昨日冷房入れっぱなしで寝てしまったから冷えちゃったのか、今朝から咳でるわー」
とか
「冬で乾燥してるからか、喉痛いわー」
とか
無意識に原因と結果を結び付けてる。でも、それが正に中医学の考え方になってて、そこに冷え性だとか歳とって潤いがもともと少なくなってきているとか、体質を組み合わせて、それに合わせて漢方薬や薬膳を取り入れる。
ひとが自然にやっていることを、ちょっと専門的に診ているのが中医学。
って思うんです。
うん、やっぱり面白い!
「気」病の弁証
本題。
今日のお題は、「気」の弁証。
「気」ってどんな症状を引き起こすの?っていう問題。
【「気」とはなんぞや】のブログと重なっているところもありますが、ちょっと復習。
●気の働き
①推動作用
人体の成長を促したり、血液や身体の水分を流したりする作用。
②温煦作用
体温の維持。「気」が虚している状態では冷え性になったり眠くなったりします。
③防御作用
元気いっぱいの人で風邪をひかない人は、「気」が張っていたり病邪を追い出していることが考えられます。皮膚には「衛気」といわれるバリアーが張られていますが、この「衛気」が十分働いていると、皮膚からの病気は入ってきにくくなります。
④固摂作用
これは出血や汗をかいたときなど、液体が外に漏れることを防ぐ作用です。また、内臓の位置を固定する作用があります。「えいやっ」と気合を入れると出血が止まる、ということではありません。
⑤気化作用
これは、身体の中で起こっている消化や代謝、津液の汗や尿への変化を促す作用。
こんなにたくさんの働きがある「気」が虚したり滞ったりすると、どうなるか。
文字通り、気が虚している状態。
上の①~④がスムーズにいかなくなります。
すると、
①→血液や体液が滞り、浮腫みや疲れのもとに。
②→冷え性 ※冷え性=気虚ではなく、冷え性の原因の一つとして考えます。
③→免疫力低下。風邪をひきやすかったり。
④→自汗。汗を止める力が虚して、普段からしっとりじっとり汗をかいています。
⑤→消化や代謝の低下。
具体的に言うと↑の説明ですが、
ざっくり言うと、
疲れやすい、無気力、自汗、活動時に諸症状悪化
などの症状が「気虚」の代表症状です。
そして、この時に考える生薬は補気剤と呼ばれる生薬たち。
人参・黄耆・白朮・山薬・大棗など。
山薬って山芋のことです!
大棗はナツメ!
普段使いは難しいけど、人参はいけるのでは?
気が滞っている状態。
「気」自体が局部で滞ると、特徴的な症状が出ます。
悶・張・痛
お腹や胸が張っている感じがする、もしくは張って痛い。
あとゲップ(中医学では噯気と言います)も。
ストレスもこの気滞と結びつけて考えることが多いです。
こんなときに使う生薬たちは行気剤と呼ばれる生薬たち。
陳皮、枳実、沈香、烏薬、香附子、檳榔子など。
陳皮ってみかんの皮です。
枳実ってダイダイ
香附子はそこらへんに生えている「ハマスゲ」の根茎。ハマスゲ、子供の時に「魔法の杖~♬」って言いながら遊んでいました(*^^*)
漢方薬では半夏厚朴湯あたりがよく使われるでしょうか。
気逆
気が上がってきて下降ができない状態。
喘息やしゃっくりとか強い吐き気とか。
昔働いていた薬局で、「柿帝湯」という煎じ薬がある人に定期的に処方されていました。長年続いていたしゃっくりが、この煎じ薬で止まったそうです。
この「柿帝」、柿のヘタなんです。だから、柿のヘタを乾燥したものをパックして、お渡ししていました。
気陥
気逆とは反対を指します。
内臓をとどめておく力がなくなり、内臓下垂や脱肛を引き起こします。
これは補中益気湯を語らずして何を語る?というくらい補中益気湯が出てきます。
過去に、脱肛の患者さんに補中益気湯が出たときもありました。
でも、この補中益気湯、気をアゲアゲしてくれるので、疲れたとき、夏バテ、ひいてはコロナの予防にまで幅広い分野で活躍します。
わたしの家族は、コロナ全盛期のときに毎日補中益気湯を服用、いまだに誰もかかっていません。
気脱
これは考えるだけで恐ろしい・・。
ひとが亡くなる前に、突然食べ始めたり突然元気になったり突然記憶がよみがえったり。多くはないかもですが、不思議な話を聞いたことがありませんか?
身体の気が外に出るときの症状です。
そして固摂機能が失われると、大量の汗をかき、便や尿の失禁、全身の脱力。
手足が動かなくなっても、気はまだまだ充実しています。
しっかり食事をしたり、美しいものを観たり、音楽を聴いたり。
気を上げる方法っていくらでもあるので、それぞれに合わせた「気」の補充を心掛けたいですね。
やっぱり、元気が一番。
しっかり食べて疲れを溜めないように気をつけなくてはですね(^^)/