きまぐれ通信

薬剤師、国際中医専門員、少林寺拳法、子育て、いろいろ人生現在進行中

「気」病の症例 【食欲不振・胃もたれ編】

あっつい日が続きますね。

湿邪によって身体も重だるいし、食欲もいつもより落ちている気がする。

暑くて眠れず、翌朝には睡眠不足で既にお疲れ気味。

 

お疲れ様です。

 

こんな日が続いた週末は冷えたビールが五臓六腑に染み渡ります。

(でもちょっと待って(*_*; 冷えたビールは湿邪の元。ほどほどが肝心です。)

ところでこの「五臓六腑」ですが、これはれっきとした中医学の言葉です。

五臓・・・肝・心・脾・肺・腎

六腑・・・胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦

 

これまでのブログで書いた、「気」「血」「津液」は、それぞれの五臓や六腑に存在し、例えば「気虚」が心で起きていたら「心気虚」、脾で起きていたら「脾気虚」と言います。

 

今日は、この「脾気虚」の症例を紹介します。

中医学で言う「脾」の働き。

それは想像にたやすい飲食物の消化、そしてその栄養物質を全身に運搬します。

その「脾」が元気がなくなったら?

消化ができず、全身に栄養物質が運ばれないので、消化不良、嘔吐、下痢や便秘といった消化管障害を引き起こします。

そしてなんといっても元気がない。疲れやすい。食欲落ちて。

宿題もやる気が出ない。

夕飯はテイクアウトかな。毎日はあかんけど。

消化が悪いから胃もたれから軟便まで。

いや、こんなときに揚げ物なんて。

食べるけど!

胃もたれのイラスト(女性)

 

 

このような症状の「脾気虚」には【六君子湯】がおすすめ。

 

六君子湯

組成:人参・白朮・茯苓・半夏・陳皮・生姜・大棗・炙甘草

治法:補気健脾

 

人参、白朮、大棗、炙甘草などで気を補い、茯苓や半夏で水分の調節をします。

六君子湯を投与したあとに消化管運動が亢進したデータもあり、グレリンという成分が関わっていることがわかっています。

 

機能性ディスペプシアって聞いたことありますか?

2013年に保険診療名になった病名ですが、検査異常なし、薬でも効かない、

「どうもこうも胃が悪くてねぇ」

という状態。

それに合わせて(?)アコファイド(一般名:アコチアミド)という薬が発売されて、しばらく薬局で取り扱いが続いておりました。

(アコチアミド:アセチルコリンエステラーゼ阻害薬。アセチルコリンの分泌を増やして消化管運動を促進させます。)

今はあんまり見ないけど、どうなっているんだろう。懐かしいなぁ。

 

そのアコファイドの漢方版ってイメージです。

 

以下に、よく聞く症例を具体例を挙げて紹介します。

 

 

40歳男性

 

昔から胃が悪い。

慢性胃炎と診断あり。胃薬常用中。

会社員として長年働き、最近疲れやすい。週末にはぐったりで、外出する元気なし。

軟便。

舌:淡白色。膩苔(じたい)

 

六君子湯服用開始後、半年足らずで症状緩和。

明らかに疲れにくく、週末に外出もできるようになってきた。

胃薬は食べ過ぎた後など調子の悪いときだけ併用していたが、半年経ったあとからは漢方薬も廃薬。それ以来、体調は安定。

 

 

患者さんにも、六君子湯は短期間ではなく、長期間服用している方が多いです。

「飲んでるときはあまりわからないけど、飲まないとやっぱり調子が悪いのよね。」

という方がちらちらおります。

「気」を補ってくれるので、疲れにくいというメリットがあるのでしょうか。

医療用にも市販にもあります。

冷え性の方はお湯に溶かしてお飲みください。生姜が入ってるので、温める効果を高めてくれますよ(^^♪